2008年3月号

今は立派なマナウスの道(R319) / あんちゃん


★1996年の夏

 パンタナールの自然を楽しんだ僕は、マナウスに向かうことにした。地図を見ると、Humaitaからマナウスまでが悪路らしい。Humaitaで道路の状況を聞くと、2ヶ所で道路が陥没し車は通り抜けられないということだった。行けるところまで行ってみようと、食料やガソリンを調達した。出発しようとしたところで、スコールが来た。川岸の建物で雨宿りをしながら金の採掘船を眺めていると、川イルカが跳ねた。アマゾンにはけっこう生息しているらしいが、今回初めて見ることができて、ちょっと感激。

 この先いいことがあるかも、と思った。スコールが止み気温が下がってきたので出発すると、マナウスから走ってきたスペイン人のチャリダーと出会った。何という幸運だろう。正確な最新情報を聞くことができた。事前の情報通りだったが、気になる一言があった。
 「ジャガーを見た。気をつけろ」と。

 覚悟を決めて僕はドロドロの道を進み、道路のコンディションがよくなってきたところで、初日のテントを設営した。ジャガーのいる場所での野営のため、少し緊張してよく眠れなかった。

 翌日走り出してしばらくすると、地元のハンターたちが獲ったばかりの獣の肉でバーベキューをしており、昼食をごちそうになった。何の肉かと尋ねると、Anta(バク)であり、豚のような味がした。

 肉を堪能してしばらく走ると、ついにひとつめの大きな陥没地点に来た。周りをよく見ると迂回路が下にあり、川幅が狭くなった場所を走り、30分ほどでクリアすることができた。しかし車がまったく走っていないエリアに入ったと思うと、ちょっと緊張する。植物が鬱そうと茂って道を覆い、廃道の趣がある。

 ジャングルの雰囲気を味わいながらゆっくり走っていると、チャリダーの言っていたジャガーが道路に現れた。2、3秒こちらを見て横切っただけだったが、野性の迫力にビビりまくった。気を取り直してしばらく走ると、二つめの陥没地点に到着。今日は抜けられないと考え、テントを設営した。明日の対策を練りながら眠る。カエルの鳴き声と昼間のジャガーのせいで、何度も夜中に目を覚ました。

 朝食を作っていると、幸運の救世主が現れた。バイクをばらして1日がかりで川を越えようと考えていたのだが、彼のおかげで2時間で越えることができたのだ。ドンピシャのタイミングで彼と出会うことができ、本当に僕はラッキーだった。

 朝食と昼食をごちそうしながら、なぜここに居るのかと聞いてみた。彼は34歳のブラジル人で、ガリンペイロ(金の採掘人)だった。サンパウロからヒッチハイクでPorto Velhoまで来て、ここまで7日をかけて歩い てきていた。マナウスに向かっているのだという。Humaitaからマナウスへは船があるじゃないかと言うと、料金が高いので歩くことにしたらしい。すごい生命力がある。あやかりたいものだ。

 ちなみに彼の持ち物は、2、3の着替え、ハンモック、モスキートシート、整髪剤、櫛、鏡、歯磨き、靴、ライター、そしてアマゾンでは必需品のナタだけだった。手助けのお礼に、ろうそく、マッチ、石けん、ビスケットをプレゼントして彼を見送った。
 頑張れ。町まであと200qだと心の中で叫びながら。








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