2004年1月号 「GOOD LUCK!」/ばるたん

 海外ツーリングでは、国内でのツーリングとは違って想像もつかないようなトラブルに遭遇することがある。僕の場合どういうわけかタイヤのトラブルに泣かされた。タイヤの呪いといってもいいくらいである。タイヤといえばまず、パンクのトラブルが頭に浮かぶだろう。でも僕の場合はちょっと違った。

●その壱
 オーストラリアのアデレードのバイク屋で、愛車XR600のタイヤを交換中の出来事だった。
 「おーい、俺のタイヤレバー知らない?」
 店を一緒に訪れた日本人ライダー達とバイク屋の店主に問い掛けてみたが、皆知らないという。

 日本から持ってきたKTCのタイヤレバー、いったい何処へ行ったんやろなぁ〜。1本2500円もしたのに・・・などとセコイことを考えながら皆で手分けして探してみたが、どうしても見つからない。

 僕がタイヤをはずしていると、タイヤは俺が交換してやると店主が言ってくれたので、彼に任せてチェーンにグリスをさしていた。しかし、他の客が来たので店主は途中で作業を止めてしまった。残りの作業を僕がしようとした時の出来事であった。神隠しにでもあったかのような出来事でしばらく必死に探してはみたものの結局見つからず、閉店時間もせまり日も沈んできたのであきらめることにした。結局レバーは見つからなかった・・・。

 翌日、限られた日程があるため宿を出発。新品のタイヤを装着した我が愛車でアデレードからポートオーガスタ間(300キロ少し)を快晴の中 ♪カニ食べいこう〜渚へ行こう♪ といつものようにパフィーの歌などを口ずさみながら時速100キロペースで走行していた。すると突然後方でカキン!! とリアタイヤが何かの金属を踏みつけたような音がした。振り返ったが何も見えずバイクも特に異常は感じなかったのでそのまま走行、最初の目的地ポートオーガスタのガソリンスタンドで給油をしようと減速したときだった。

 「なんや、リアタイヤ振るなぁ〜パンクかな?」
 バイクを止めてリヤタイヤを見てみると、やはりタイヤはぺしゃんこになっている。丁度うまい具合に隣にキャラバンパークがあったので、テントを張り少し落ち着いてからバイクを木にもたれさせタイヤを外しビートを落とした。

 あれれ!・・・
 一瞬目が点になった。チューブが木っ端微塵に破れ、タイヤの裏側にはくっきりと遠心力で押し付けられたタイヤレバーの跡とぱっくりと裂けた風穴が……な、な、なんとタイヤレバーはタイヤの中にあったのである! 遠心力でタイヤレバーがタイヤを引き裂いて外に飛び出したようである。驚きとアホらしさにただただ呆然とするばかりであった。

●その弐 
 晴天のパースからポートヘッドランドへの道のりを走行中 ♪さすらおぅ〜この世界中を〜♪ と今度は奥田民夫の歌を熱唱中、追い越して来た4WDのスペアタイヤが脱落し、時速100キロ以上は出ていたであろう僕のバイクめがけて飛び込んできたからたまったもんじゃない。大きくバウンドしたタイヤが、僕の頭上を越え遥か後方へ転がっていくのが見えた。

 「危ないやんかーコラ〜!!」
 激怒した。へたすりゃタイヤを避け損なって死んでいたかもしれないのである。必死になって車を追いかけたが、時速160キロは出ていたであろうその車は、何事もなかったかのように地平線の彼方へ消えてしまった。

●その参
 最悪の事態はダービー〜カナナラ間(全長700キロ)のロングダートで起こった。ここではリヤタイヤのハブベアリングがぶっ飛んだ。先日点検した時には異常はなかったはずなのに・・・涙である。

 タイヤはグラグラ揺れ、何回もチェーンがはずれた。次の町までは300キロ、300キロといえば東京〜名古屋間位はある。このままいくつあるかわからない川渡りをクリアして、次の町までたどり着けるのかと思うと泣けてきた。ハブが割れて中のシャフトが見えている。

 もうあかん、ここで死ぬかも・・・大げさかもしれないがマジに思った。とうとうチェーンはクランクケースに噛み込んで走行不能になり僕の旅は終わった。

 旅を終え、なにはともあれ無事に帰国できたことに感謝した。一つ間違えば僕は命を落としていたかもしれない。事実僕の知人は海外ツーリング中に志し半ばで生涯を閉じた。楽しい話は出るけれど、悲惨な話はあまり表には出ないものである。結局、よい旅になるのもそうでないのも運次第なのかもしれない。

 これから旅立つすべての人に Good Luck ! と言いたい。


 まさか、この後トラブルが待っていようとは・・・。



 タイヤレバーの飛び出した穴とバラバラになったチューブ。



 四輪駆動車に助けられキャラバンパークヘ。オージーに感謝!


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