2007年2月号 沈没のススメ/どいうら



  旅での沈没とは、その土地、場所が気に入ってしまい、何をするでもなく、ダラダラと長くいついてしまうことらしい。で、あまり良い意味では使われない。

 日本を出発するとき、旅を始めるときって、どんな気持ち?
 希望と不安に胸を躍らせて、ワクワクドキドキ?

 でも余りにも長すぎる旅は、旅をしていること自体がマンネリ化してしまい、旅の感動や刺激が失われがちになってくる。そんなときどうすればよいか? 思いつくのが、一度日本へ戻りしばらく過ごして、また旅へ出たくなったら出かけて行く方法。でも日本には帰りたくない。そんなことを考えつつ、たどり着いたメキシコの某宿。ここが始まりだった。

 以前読んだ本に、このようなことが書いてあった。
 時間というものは、ありすぎても少なすぎても困る。つまり暇をもてあますのも困るし、忙しすぎて時間が足りないのも困る。
 ではどちらがより困るだろうか?
 日本人はどちらかといえば、暇をもてあますことの方がより困ると感じるのではないだろうか? それは暇な人のイメージが悪いから。
 暇があれば、それこそ時間の心配もしないでのんびりと余裕をもって過ごせるだろうに。でも世間はのんびりしてる人には冷たい。暇そうにしていると、ダラダラしているとかブラブラしているとか言われたり。
 なので沈没するということには、どうも悪いイメージをもたれてしまう。
 私はただ沈没してるのではない、仕方なく沈没してるんだ、と色々理由をつけて正当化しようとしたりもした。

 今は雨季だから乾季になるまで……
 冬だから夏まで待ってるだけ……
 バイクが壊れて日本から部品を……などなど。

 たしかに北中南米縦断するにあたって、その地方の良い時期を連続して走ろうと思えば、そうとうな無理がくる。雨季のアンデスやアマゾン。または冬のパタゴニアなどMの気があるなら別だが、どうせなら、ベストシーズンを楽しく気持ちよく走りたいではないか!?
 なーんて言っても言い訳にしか聞こえないんだが、沈没することにちょっとした発見もあった。
 先にも述べたが余りにも長すぎる旅は、旅がマンネリ化してしまい感動や刺激が失われがちになってくる。そんなときは一度どっぷりと沈没してみると良い。ブクブクと長期間の沈没生活を続けていると、そのうち無性にバイクで旅したくなってくる。
 そんなとき旅を再開すると、旅を始めたときのようなワクワク感ドキドキ感、バイクで旅する楽しさ嬉しさがよみがえってくることがわかった。

 あー、バイクで旅するってなんてスバラシイんだろうって。
 人は遠いところに行けば、自分の国も自分のことももっとわかるようになると思う。それまでごくあたりまえと思っていた事も、遠くに行けば違うようにみえてきたり。
 移動ばかりの旅ではなく、しばらく生活(沈没?)してみると、その国の人たちがやっていることことが、けっこう自然に映るようになったり、逆に自分達がやっていたことのほうが、変ではないかと思えてきたりすることもある。

 あるきっかけで、旅人はどうすれば沈没するのか? を考え、世界一居心地のよい(沈没できる)宿を目指して、2002年にアルゼンチンのブエノスアイレスで、宿をオープンさせる手伝いをした。その後パタゴニアのカラファテでも。
 定期的な沈没は、旅のマンネリ化を避けテンションを高く維持するのに役立ったりする。長旅に疲れた方、のんびりと時間を過ごしたい方、自分や自分の国を見直すためにも、是非これらの宿でしばらく生活(沈没?)してみることをオススメします。

 二輪車は走り続けてないと、倒れてしまう不安定な乗り物。そんな二輪車に乗る二輪車乗りは、常に前へ進むことを強いられる。でも時には、転倒して前に進めなくなるときもある。
 そんなときは焦らずゆっくりとバイクを起こして、再出発すれば良いんじゃ?
 そんな僕は、居心地の良い各地で大転倒を繰り返したようだ。バイクを起こしてエンジンをかけなおすことが、おっくうになるような大転倒を各地で……。








★どいうらさんのプロフィール

 自称爽やか系大陸縦断沈没ライダー。海外をバイクで走ってやる! と意気込んで1999年日本を出発。各地で沈没を繰り返し、気づいたら旅を始めて7年の歳月が経っていた。20カ国、15万キロを走り2006年に南米アルゼンチンから無事帰国。


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