2006年5月号  高山病と青い空/五十嵐恵介

 僕は青い空が好きです。吸い込まれそうなぐらいに濃い青の空。秋晴れの日に真っ青な空が見えますよね。あんな空が好きです。海外ツーリングに行くときも、空が濃い青に見えそうな場所を何となく選んでいるような気がします。実際に行く理由は、たまたま行きやすかったり、仲間に誘われたりすることの方が多いのですが。

 でも空が青くきれいなところは、だいたい標高が高く空気が薄い所なんですよね。

 何度か行った海外ツーリングの思い出の中で、高山病に苦しんだことがとても印象深く残っています。初めて高山病を経験したのは1998年で、中国からキルギスタンに抜ける、標高3800mのトルガト峠の国境でした。

 初めての海外ツーリング、初めての陸路での国境越え。中国の出国手続きがなかなか進まず、普通に仕事の夏休みだけでのツーリングだったので、時間が気になって仕方ありません。

 中国のイミグレを越えたのが金曜日の午後3時過ぎ、キルギスのイミグレは午後5時まで、しかも土日は入国手続きをしてくれません。キルギスのイミグレまでダートロードがあり、その距離は約100q。全然体にあっていない借り物のセローで頑張って走りました。空気が薄くなってエンジンが吹けなくなり、エアフィルタを外しました。それでも60q/h以上のスピードが出なくて、かなりあせりました。

 キルギスに入れないまま土日を過ごさなければいけないのでは?

 初めての海外ツーリングで不安がつのりました。が、なんとか5時までにキルギス側へ到着。標高も高いし寒いし疲れたし、気が付くと頭が痛くなっていました。

 たぶんこのころから高山病です。無事国境越えが出来てうれしくて、夕食時にキルギス人とウォッカで乾杯しました。これがよくなかったようです。

 「ちょっと高山病っぽいからあまり飲めない」ってロシア語風の日本語で説明したのですが、彼らは「ならばウォッカに塩を入れれば高山病はたちまち治るぞ!」と日本語風のロシア語で言ってきました。「これも現地の風習か?」と真に受けて塩入りウォッカを飲んだけどやっぱりまずい(>_<)。なんだか頭痛もひどくなってきたので、早めに寝ることにしました。

 翌朝、頭が重くて起きられません。でも外はものすごくいい天気、黒に近いような深い青の空。ウォッカだってそんなに飲んだわけでもないのに、空が回って見える……。塩ウォッカのお陰か、高山病はますます悪くなったようです。頭に酸素が回らないようで、ツーリングの荷物もどこに何があるのか全く分からない状況。出発の準備がなかなか進みません。

 やっとの思いで荷物をまとめ、バイクのエンジンをかけようと思ったら、空気が薄いせいなのか、前日エアフィルタを付けないで走った罰なのか、セローのエンジンがかからず、そのうちバッテリーが上がってしまいました。

 うわぁこのセロー、キック付いて無いじゃん(>_<)

  仕方なく押し掛けです。バイクが走らなくては話にならないので、もう必死! やっとエンジンがかかったころには、心臓バクバク、頭はグルグル。抜けるような青空を仰ぎ、吐きそうになりながら地面にへたり込みました。

 今でも青い空の写真や映像を見ると、息が苦しいような気がしてしまいます。それから何年かして、また懲りずに標高の高いペルーへツーリングに行き、見事に高山病にかかりました。青い空は好きですが、高山病はもうこりごりです。ボリビアのウユニ塩湖の空もすごくきれいという話を聞き行ってみたいのですが、何万年かして、ボリビアの標高が下がったら行ってもいいかなぁ……。

★プロフィール<br>
茨城県 五十嵐恵介 33歳 会社員

★URL http://homepage1.nifty.com/IGAIGA/


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