2004年8月号 背骨が折れた/稲川啓

 APE100でアフリカ縦断中、ジンバブエのビクトリア・フォールの町外れにある巨大バオバブの木を見に、ここで再会した鉄馬美女とやってきた。そのうちの1つに登ったはいいが降りるときに、どうしても足が届かず、仕方なく3mほどの高さからぶら下がり、その状態のまま飛び降りた。しかし着地に失敗し、腰に激痛が走る!! しばらく痛みのため大地をゴロゴロと転がり、うめきもだえていた。あろうことか鉄馬美女は大笑いしながら、その状態の俺を写真に撮っていた! なんて薄情な奴だ!!

 その時は「こいつはやばい事になった。ひょっとしたら椎間板ヘルニアになったかも」と考えていた。何しろ20年前ヘルニアの手術をしていて、その記憶がよみがえってしまったのだ。そういえばあの時手術をしてくれた先生は「もうバイクなんか乗るんじゃない」と言っていたっけ……。当時の俺はツーリングにはまっていた時で、退院2ヶ月後にはコルセットをつけたまま北海道ツーリングに出発していたっけ。

 その後何とか泊まっていたバックパッカーズに戻り、後はただひたすら痛みに耐え寝ているだけ。トイレにいくのが大変で、それを見かねたここのスタッフが杖を貸してくれた。歩く姿はヨボヨボのおじいちゃんだ。それを見てまた大笑いする鉄馬美女が横にいた。

 とにかく、ひたすらおとなしく寝ているしかない。病院に行くべきなのだろうが、ここはアフリカ今一つ信用できない。その時は背骨が折れているとは思ってもいないので、何とか痛みが取れればツーリングを再会できると考えていた。そうこうして一週間たつと何とか歩けるようになり、これなら何とかなるだろうと次の国ザンビアへと向かった。

 その後は1日走ったら3日休みという感じで旅を続け、2か月後にはキリマンジャロの麓に着いていた。その頃には腰の痛みはほとんどなく、ついつい目の前に山があるものだからキリマンジャロ登山に挑戦。そのまま無事登頂し戻ってきた。おそらくこの頃には既に背骨は引っ付いていたんだろうなーーー。

 結局そのままアフリカツーリングをして日本に帰国。帰国後、念のため精密検査を受けたら何と背骨が2本圧迫骨折していたのだ!! レントゲンを見ると本来長方形の背骨がひしゃげて台形になっている。先生もこれを見て「痛かったでしょーー」とのたまった。「どうりで痛いわけだよーー」と思ったが、こんな状態でキリマンジャロに登ったのかと思うと我ながら驚いてしまう。

 結局、骨は既に引っ付いているし、これといって今治療が必要ではないらしく、「お大事に」という言葉に見送られ病院をあとにした。イヤーー人間の自然治癒能力というのは、すごいものです!

 今は新車の軽自動車を買い、これにキャンプ道具を積みこんで旅をしている。バイクはというと町乗りにだけ使っている。体のことを考えると、もうバイクでの長距離ツーリングはいいかなとも思うが、ほとぼりが冷めたら、また旅に出てしまうのかもしれない。

 バイク中毒患者は今日もバイクで町をバリバリ走るのであった……。


俺が落ちた巨大バオバブ


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