2007年12月号 

「世間は狭い? 行動半径が広いから出会うんだよ!」
〜ヨーロッパ一周旅立ちの朝〜/前原弘昌

 早朝ドイツのハンブルグYHのベランダで日記を付けていたら、ひとりの日本人(らしき)女性と目があったので会釈した。
「日本人ですか?」
 彼女が近づいてきて尋ねた。
「ええ、そうです」
 と答えると、連れの男性に、
「日本人ですって!」
 どこの国の人に見えたんだろう?? 俺のヘルメットを見て、
「私たちもバイクでまわっているんです」
「ヘぇ〜」
「ブラジルから送ったバイクが届くので、今日取りに行くことになっていて」
「もしかして世界一周しているんですか?」
「はい!」
 一気に話が盛り上がり、自己紹介。得政紋子さんと小梅和宏さん。
「俺の友人にも夫婦で自転車世界一周している人達がいるんです。あなたたちは5月にブラジルにいたんですよね。ちょうど同じころ南米にいたはずです」
「オレ達もけっこう日本人の夫婦に会いましたよ。新婚旅行に自転車で旅に出て、何年か後にまた出たとか……」
 その言葉を聞くと同時に、俺は、
「久保さん!」と叫んだ。ほとんど同時に、
「久保さんと谷田貝さん!」と彼女ら。
「うひゃ〜、やっぱり。あの人達、有名なんやなぁ。かなりの人から会ったという情報が入ってくるわ」
「あの人達、本を出していますよね」
「うん、俺も出版を勧めたことがあります。実は俺も久保さんにはオーストラリアで出会って、その時のバイク旅のことを本にしているんです。その後やったアメリカの旅のことも……」
「えっ、ひょっとしてそれって『自由じかん』という本ですか?」「えっ、知ってくれてるの?」
「買ってはいませんが、『アウトライダー』に紹介してあったし、賀曽利さん(※賀曽利隆氏。世界を股にかける俺より6つ年上の鉄人冒険ライダー)さんの本にも載っていたでしょう?」
「ええ、『中年ライダーのすすめ』という本の中で取り上げてもらいました」
「いやぁ〜、人の縁てホンのちょっとしたことでこんなにつながるんですね。今でも、もし目を合わさなければ、ほんの5mほど離れたところですれ違っていただけかも知れませんよね」
「本当やね」
 お互いに今日がヨーロッパバイク旅の始まりの日だった。世界一周している彼らのエネルギーも分けてもらって、俺もいい旅をしようと、心のウキウキ度はますます上がっていった。
「この出会いのこと本に書いてもいいですか?」
「はい、もちろんいいです」
「でも久保さんに、ハンブルグのYHで会ったなんて言うとまずいですかね」
「ホントホント、そんなところに泊まって旅をしとるんかいな、軟弱やなぁと言われそうだ」
「キャンプ場でもまだ軟弱。野宿せにゃ、と言われそう。港近くの草むらでテント張っていて偶然に目があったとか、脚色しますか?」
「ホンマやねェ〜」
 と大笑いで楽しい時間があっという間に過ぎていった。
 朝食を食べて、お互いの無事と日本での再会を誓って8時すぎ、俺は出発した。

【プロフィール】
1952年岡山県生まれ。京都市在住。心理カウンセラーやメンタルトレーナーとして、企業講演/研修、実業団陸上選手育成などで東奔西走する傍ら、バイクで世界を駆け巡るアドベンチャーツーリスト。1984年の日本一周をはじめ、1990年オーストラリア一周、1995年北米大陸一周、2001年ヨーロッパ&モロッコ一周成功。世を捨てて夢に生きるのではなく、家族を持ち現役で仕事をしながら、60歳までにバイクでの単独分割6大陸走破を夢見る。1996年より、バイク旅の経験を生かし、四輪でのオーストラリア、ニュージーランド、カナダアドベンチャーツアーを何度も主宰。「いつまでも目ん玉の輝く男でありたい」と、バイク旅の内容を本にまとめて出版し、その売り上げで次の旅をするのがポリシー。二兎を追わねば二兎を得られず。趣味はメダカの飼育・観察。日曜大工。嗜好品:ビール。

ホームページ  http://e-maehara.com


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