2004年7月号 ヒトのコトバ/ミミーゴ

 世界を走った3年間、僕は旅の様子をリアルタイムにホームページで紹介していた。その文章量は400字詰めの原稿用紙にして2000枚を超え、僕はもう、自分の言葉で書くことに少々疲れている。ここでは代わりに、僕が旅で出会った、忘れ得ぬヒトのコトバを紹介したいと思う。

●「旅人は、5日滞在したら、そこのことを少し理解した気になる。5週間いると、全てを理解した気になる。しかし5ヵ月もいると、何も理解していなかったことに気づく」(ある自転車旅行者/ロサンゼルスにて)

 これは20年以上も前に自転車で世界一周した、ある旅人が教えてくれた言葉。自身の言葉ではなく、彼も道中で聞いたもの。
 どの国もどの街も、旅行者の立場でのぞいただけでは、なかなか本質は見えない。わかっちゃいるけど、それでもついつい「語って」しまう。「あの国はサー」なんて。
 反省の意味を含めて、ご紹介。

●「旅に出て良かったとか、良い旅をしているとか、旅の最中にムリに思わなくてもいいんじゃないですか? 全てが終わったあとで、『いい旅だった』と思えることもあるんですから」(あるライダー/チリのプエルト・モンにて)

 そのライダーは、アフリカを苦労して走りながら「オレは一体、何をやっているんだろう」と思っていた。しかし全てが終わって振リ返ってみると、その日々が一番心に残っているという。

●「オレもいつか、なんて思っているヤツに、『いつか』なんて、訪れない。本気でやる気のあるヤツは、もう黙って始めているよ」(あるミュージシャン。チリの「汐見荘」にて)

 実際に会って聞いたのではなく、宿の本棚にあった古い雑誌を何気なく開いたら、その人のインタビューが載っていた。別にファンじゃないけど、単純にジーンと来た。動き出さなければ、何事も永遠に始まらないのだ。

●「みんな決めつけているだけで、自分で試す前にあきらめている。俺は自分が国境で追い返されるまで、あきらめない」(あるライダー。ハンガリーのブダペストにて)

 そう言ってこの人は8年8ヶ月8日間のツーリングの最後に中国を走り、日本に戻ってきた。大金を積むのでもなければ、個人でバイクを持ち込み、ツーリングすることは中国では不可能とされる。しかし、何事も最初に道を切り開くパイオニアがいるからこそ「前例」が生まれるのだ。

 ・・・自分の言葉が、思いもよらぬ影響を及ぼすこともあった。
 ヨーロッパのある国で、体も気も小さく、そのことでコンプレックスを抱く青年に出会った。僕は極真空手を始めて性格が変わった友人の例をあげ、「人は変われる」と励ました。
 その数ヵ月後、東南アジアの某都市で彼と再会した。ネオン輝く夜の歓楽街を、娼婦を従えて我が物顔に闊歩する彼は、今ではある国際犯罪組織の一員だという。
 「感じが変わったね」と僕が言うと、彼は言った。「変われるって言ったのは、青山さんじゃないスか」・・・。


3年半の間、僕は自分の言葉を形にするのに一生懸命だった(メキシコにて)


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