2004年3月号 未だに混乱していること/中井誠司


 
旅の途中、なんとも不可解な体験をした方も多いと思います。私も、よく林道のふんずまりなんかで野宿をしていた頃はありました、やはり。出来るだけご遠慮したいので、すぐ酒飲んで寝る様に努めていたのですが。
 それでなくても寒いこの時期、コワイ話ではなくて不思議なお話を。

 アフリカはブルキナファソのボボデュラッソ。ここで私は女房の春美と二人、地元の家庭でご厄介になっていました。奥さん、シドニは地元の方ですが、旦那さんはステファンというスイス人。こちらで生活の基盤を造り上げている最中でした。

 西アフリカに土着宗教に基づく呪術師がいることは、以前本で読んだことがありました。ステファンによると、今でも生活に密着しているものだそうで、病気の治療に限らずあらゆる決定の判断にも使われているそうです。彼は自身が受けた不思議な体験を淡々と語ってくれるのですが、「フーン」という感じで半信半疑でした。
 そんな私にしびれを切らしたのか、ある夜彼は親友の呪術師ヤヤさんを紹介してくれました。よく屋台でうまそうにビール飲んでるようなオジさんで、温和な目。あまりにそれっぽくないのです。今まで一緒にビデオでカンフー映画を見て、ゲラゲラとやっていたのだから。聞けばマリで6年修行して、今は主に病気の治療と未来予知が専門とか。テレパシーの様に、人に何かを伝える事もできるそうです。では早速と言って、間借りしている私達の部屋で始める事になりました。

 ポケットから取り出した物は、チェスの駒のような物5本。この駒は土台が土、上部がブッシュから取ってきた小枝と藁で出来ていて、それぞれが鳥の象徴であり、1本は神である小人とのこと。これらを床の上に丁度焚き火をする時の様に重ね倒し積み上げます。ここで占って欲しい事を告げると、ヤヤさんは「アー、ムニャムニャ」と何やら唱え始める。そして、大きいヒョウタンを二つ割りにした物で駒を隠します。よく見りゃこのヒョウタン皿は、私がさっきスパゲッティーを食べたときの食器じゃないの。そしてヒョウタンの周りを両手でホワホワとやる。よく見ているとヒョウタンに触れる事は無いのです。そしてヒョウタンを取ると・・・何も変化無し。ウム?再び同じ繰り返し。変わらず。んー?そして数回目。ヒョウタンを取ると何と、倒れていた5本のうち3本が立っているではないの!

 その後は混乱している私の頭の中などお構いなしに、次々に奇妙な現象が現れる。全てが立ったり、下の方にあった1本だけが立ったり。どの駒が立つかや、駒の位置関係によって占うそうですが、占いの結果よりも目の前で起こってる現象があまりにショックで、私は恐くなってしまったのです。

 これからの旅の事も尋ねました。丁度ザイールが内戦に入るか? という頃でルートをどうしたものかと思い、以前より行きたいと思っていたキサンガニについて占ってもらった時。ヒョウタンを外す前に中で「パカパカパカッ」と大きな音がして、ヤヤさんもビックリ。開けると5本全てが立ち、それも一直線に並んでいるではないの!キサンガニルートはすぐさま中止と決定した次第。実際その2ヶ月後クーデターが起きて、キサンガニから東部のザイールは悲惨な事になりました。

 最後にお礼として日本より持参していた、日光は東照宮の交通安全ステッカーをプレゼント。ヤヤさん、早速力があるものか試すべく駒の下に置いて始めるが、何度やっても駒は動かず。
 「コリャ何も力がないよ!」
 期限切れでしょうか?

 今度キャンプでお会いする機会があればこの手のお話、どなたかお聞かせ下さい。


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