2006年9月号 はじめの一歩/野副竜平


サンフランシスコ峠(アルゼンチン)
サンフランシスコ峠(アルゼンチン)

 「えぇっっへ!? 妊娠?? ほんとに!? おめでたっ〜!?」

−2006年5月吉日。
南米アルゼンチンの首都ブエノスアイレス。それは向こうから突然やって来た。

晴れた日曜日の午前中だっただろうか。状況が状況なだけに、俺と妻はちょっとばかり戸惑っていた。南北アメリカ大陸縦断を終え、次なる大陸ヨーロッパへ想いを馳せていた時である。いや実際は馳せるどころか、既にバルセロナ行きの航空券を持っていた。そんな時、俺と妻の間に子供ができたのだ。素直に嬉しいのだけれど、同時にそれは突然のゴール宣告でもあった。

こうして2005年4月から始まった俺と妻の世界一周ツーリングは、411日間で一つの終焉を迎え、南北アメリカ大陸縦断という形で幕を閉じた。15ヶ国、約35,000kmに及んだ旅を終えた今、充実感は適度にある。いろんな国の景色も見れたし、素晴らしい人々に会うこともできた。旅行としてキリもよく、達成感も適度にある。はっきり言ってしまうと、なんら不満はない。

しかし。しかし、である。なんと言うか、ゴールしたという実感が全く薄い。降雨コールドで試合がプッツリと終わった高校球児の気持ちは、きっとこんな感じなのだろう。

ひょっとすると。

無意識にも次なる目標へ向け、心の準備を始めているのかもしれない。この文章を書いている今、そんな自分がいる事にも気付かされた。遠い将来、30年後。もし少しでも、この気持ちが残っているのならば……。その時はもう一度、ゴールのオーストラリアを目指そう。そんな夢の続きも悪くない。

自分らしい人生というのは、本当に人それぞれ。
毎日を明るく楽しく笑って生きるという選択肢もあり、一生不満を漏らしながら生きるという選択肢もあり。
誰がなんと言おうと、どの様な人生を過ごすのかは、その人生を歩む本人の自由。

だからこそ。

大切なのは、自分で「それ」を決めること。
そしてこうと決めた以上、その目標に向け、自分を信頼しチャレンジすること。
その結果がどうであるかは、大した問題ではない。
チャレンジする事自体に意味があり、それこそが重要なのだから。
そこからきっと、自分にとっての、かけがえのない何かが生まれるはずだ。

だからこそ。

本当に大切なのは、勇気をもって踏み出す「はじめの一歩」。

30年後。ゴールのオーストラリアを目指して。
今日はそんな夢の始まりの日。
そしてこれが、はじめの一歩。


★野副竜平
バイクで世界一周するはずが、なぜか南北アメリカ大陸縦断だけで旅を終えた、九州男児。

★ホームページ:http://www.ordinary-days.com/

ホルヘと共に(アルゼンチン/アスル)
ホルヘと共に(アルゼンチン/アスル)


ペンションアミーゴ(メキシコ)


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