2004年11月号 スローライフ /住田恭子

 私がアメリカ大陸縦断の旅から帰国して、もう4年がたった。その前のヨーロッパや中近東の旅から考えると、なんと8年……。時の経つのは、ほんとうにあっという間だ。友達や知人に久しぶりに会ったりすると、
 「あれ、今、日本にいるんだ。今度はどこに行くの? 次の予定はある?」
 なんて言われたりして。そんな問いかけに、ちょっととまどったりする私がいる。いったい、いつまでこんな風に言われるのだろう……。

 実際に海外ツーリングをしてわかったこと。旅に終わりなんかない。はっきりいって、行きたいところを挙げればきりがない。一生旅に費やしても、欲張りな私のこと、きっと時間が足りないだろう。旅の終わりには、その旅の間に、次の目標みたいなものを見つけて帰国するものではないだろうか? 他の人は違うかもしれないけれど、私の場合はそうだった。

 ヨーロッパから中近東にかけて旅した時、帰国する私の胸の内には、「アメリカ大陸の縦断もおもしろそう」なんてものが、漠然とだったけど生まれつつあった。そして2年後、実際にアメリカ大陸縦断ツーリングに向かったわけだ。それでは、今の私は?

 今私は、物作りに夢中になっている。「なんだ、旅には関係ないじゃん!」なんて思われがちだけど、私の中では、ちゃんとつながっているのだ。旅の間、私はいろいろな文化に直に触れることができた。ヨーロッパの歴史ある西洋文化。カルチャーショックを受けたイスラム文化。個性の光るインディアン文化。それらの中には、ちまちまと手作りされた日用品から、はたまた、こんなものまでどうやって手で作ったんだろう、と思える工芸品までいろいろあった。そして南米から帰国するころには、「私も物作りがしたい!」という気持ちが芽生えていた。

 私が次に持った夢は、「行きたいところ」ではなくて、旅から影響をうけた「したいこと」だった。そして今、機織している時には、グアテマラで見た、色とりどりのインディヘナの衣装を思い出すし、イスラムの絨毯も思い出す。そして家具を作ろうと考えれば、ヨーロッパで見た、素敵な西洋家具を思い出したり、はたまた、「李朝家具なんかもいいなあ」と、まだ行ったことのない国に思いをはせたりしている。日本にいながら、海外を旅しているような気分になり、つい、にやっとしてしまう。

 すべてが、せかせかと忙しい日本の生活の中で、大量生産するのではなく、一品ずつ手をかけて、なが〜く愛してもらえる作品を、作っていきたいな〜なんていうのが、今の私の夢だ。周りのせかせかに惑わされないよう、「スローライフ」でいいじゃないかと思う。でも時々、有効期限の切れたパスポートを眺めながら、「世界の工芸品を見る旅もいいかも……」なんて、ちらりと頭をよぎることもあるのだけれど。さておき、私の旅の第2ラウンドは始まったばかりだ。


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