2007年9月号 男二人旅/横江大介


2003年5月 静岡/秋葉キャンプ場

「うーん、あんたらひょっとしてホモ?」
「は? 違いますよ」
「だってフツー、海外ツーリングなんて野郎同士でいかないし、二人ともバイクはBMWだし、ウェアもメットも一緒だよね。なんか怪しいよ」
「%&$’□?(*o*)!!!……単なる偶然です。第一、俺こいつ嫌いですから大丈夫です」

 何が一体大丈夫なのか全く不明だが、ホモ疑惑を周囲に抱かせたまま、4年前の春に俺とクリスの男二人旅は始まった(ちなみにクリスはアメリカ人。ホモ達ではなく単なる学生時代の同級生である)。

 旅の記録は、二人の共同サイト http://www2.gol.com/users/chrisl/travel/index.htm に譲るとして、本コラムでは今回の経験をもとに、「海外ツーリングで男二人旅を実行するにあたり、どんなことに注意が必要か?」ということを考えてみた。

一、所持品は共有しない
 旅の定石だが、荷物はやはり少なく済むならそのほうがいい。二人旅の場合、共有できるものを分散して一人あたりの荷物を減らすことができる。また、相手が同じものを持っているならば、少し少なめに用意しても安心だ。しかし、これは絶対にやめたほうがいい。

>カザフスタン西部の悪路でクリスが致命的なパンクをしたとき、俺は日をまたいでアクトベの町までひとり走った。もし荷物を共有して分散させていたら、必要なものがすべて積載できなかったかもしれない。クリスのリアホイールまでも修理のために背負っていたから、さらに大変だったはず。また少なめに持っていたつもりはなかったが、パンクの修理具材を現場ですべて使い切っていた。もし、アクトベに着く前に俺のほうがパンクでもしたら、そこで立ち往生だったかも知れない。

一、協力しない、助けない
 一緒に旅をしているのだから、ハードルがあれば協力して越えるし、相手に何かあったら助ける。普通に考えれば当たり前。でも意識的に、そういうつもりでないほうがいい。自分は協力する、助けるという意識があると、相手も協力してくれる、助けてくれるという期待が無意識に生まれる。それは油断を生む。また相手がそうしてくれなかったときに、失望と不信を生む。

>ロシアのマグダガチという町の手前で、後ろを走っていたクリスがついてこない。しばらく待ってみたが一向に来ないので転けたかと思い、引き返した。すると、本当に転けて軽い捻挫をして動けなくなっていた。
「困っているのにすぐに助けてくれないなんて、何のために二人で旅をしているのかわからない」
 という怒りが、クリスの最初の一言だった。一人旅だったなら、クリスはここで転けることはなかっただろうと今でも思う。

一、役割分担をしない
 違う人間が一緒にいるので、得意不得意で自然に役割が決まってくることもあるが、こういうのも意識的に是正したほうがいい。

>俺は外国語に対するセンスがひどく悪い。一方、クリスはセンスがいい。英語でのコミュニケーションにいたっては言うまでもない。こうしたこともあって、旅の先々でのコミュニケーションで無意識にクリスに頼っていた感があった。クリスが事故にあって一人になったとき、それを痛感した。

一、意見がわかれたときは根拠を3つ用意する
 二人で旅をしていて意見が分かれるときは、感情的になっていることが多い。そういう時には冷静にそれぞれの意見に対する根拠を少なくとも3つあげるといい。

***
 結論としては、旅は一人でするもの、という大原則を忘れないことだと思う。一緒にいてもそれぞれの一人旅というスタンスが大切。特に男同士での海外ツーリングに関しては。このことさえ忘れなければ、旅をより面白く深く記憶に残すことができるであろう。

 ちなみに余談だが、男二人組が世界をバイクで旅していて、こいつらはホモではないか? という疑い方をするのは日本人だけらしい。したがって、ホモに間違われないように揃いのウェアを着用しない、などということは今回の考察には含めなかった。(了)


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