第16回WTN-Jお話会

『 思い立ったがエジプト 』

日程: 2007 年 6月 24 日(日)
場所: 東京都品川区グレイスビル泉岳寺
話し手: 「ヤキゾバン」 こと鈴木稔さん

報告者: 古山隆行
 

 司会の紹介後、いきなりカップヤキソバの被りもので登場した鈴木さん。インパクトのある登場だ。10年以上昔の事だが、あるキャンペーンに応募したら、この被りものが当たり、それをバイク仲間のキャンプイベントで着たら、その日から「ヤキソバン」と呼ばれるようになったらしい。こういった、人をびっくりさせ、楽しませるところに鈴木さん、いやヤキソバンの人柄が表れていると思う。

  今回のお話会の依頼があった時、かなり迷ったらしい、自分が行った旅行は、長期でもなく、何ヶ国も巡った旅でもなく、ツアーでの9日間の海外ツーリング。話してもいいか、受けるかどうか随分考えていたらしい。でも、迷っている間に、日程が決まり、会場が決まり、いつのまにかOKしていたらしい。(スタッフ注:一応、本人の了承後に段取りを始めているはずです。)

  スライドは、いきなりヤキソバンの失敗談。いろいろイラストで紹介されたが、一番は、背負っていたザックのベルトが路肩のガードレールに引っ掛かり、バイクから落ちてしまった話。そんな事が起きるの?と会場は大爆笑。
  次のスライドは、生まれたばかりの頃のヤキソバンの写真。今とそっくりで、またまた会場は大爆笑。でも、その後ずっと、病弱で、体も弱く、心まで弱くなっていった。10代後半になっても強くなれなかったと話すヤキソバン。
  専門学校時代、学校までの25 km を自転車で通っていた時、遅刻している姿を見兼ねた母親から「免許を取りなさい。」と言われ初めてバイクに乗る事に。

  バイクに乗り初めてから、がらりと変わり始める。バイクって楽しい。いくら走っていても飽きることが無い。どのくらい乗ったら飽きるのか、それを確かめたくて、ある日、日本一周の旅に出発する。でもきっかけはそれだけでは無い。失恋もきっかけらしい。こんなところに人柄が表れると思う。普通ならあまり人に話したくないような失敗談まで表に出し、それで人を笑わせるところが、ヤキソバンのいいところだ。

  ホントは、日本一周そして次は世界一周というプランを持っていたが、日本一周後の就職活動、そして、仕事後のいろいろなしがらみで時間も取られ、海外への夢は遠のいていった。就職活動中、面接で日本一周したことを話すとプラスに受け取られると思っていたのに、実はマイナス要素だったと思い知らされる。単独行動で組織の和を乱す存在と思われ、だんだん日本一周した事を職場で話す事もしなくなった。

  転機は会社を解雇された時だった。手先の器用なヤキソバンは、その会社で義足を作る仕事をしていた。将来の事を考え、義肢装具について教える職業訓練校の入校を決意。その試験会場でたまたま隣に座った女性と話した事がきっかけで海外ツーリングに行く事を決意する。会場からはいろいろツッコミたくなる雰囲気が高まったが、とりあえず、ヤキソバンの弁明、いやいや話を聞く事に。

  試験が終わってから、ヤキソバンから彼女に声をかけ、ちょっとお茶を飲みに行く事に、そこで彼女になぜこの試験を受けたのか聞いてみると、「数カ月前まで、カンボジアを旅していて、地雷で足を失った子供達に会っていた。その義足はとっても粗末だった。そんな子供達にもっといいものを作ってあげたい」というのが理由だと聞いた。その時ヤキソバンは、やはり現実を見ないとだめだ。と感じ、エジプトに行こうと決意する。その日は2006年3月7日、そして出発は3月17日、その時点ではパスポートは持っていないし、国際免許も持っていない。たった10日でいけるのか?

  ところで、なんでエジプトなの?カンボジアじゃないの?と会場からツッコミ、いや質問が入るが、「砂漠を見たいから」ときっぱりヤキソバンは理由を説明していた。

  なんとか10日で準備もでき、無事に出発の日を迎えることができたヤキソバン。「ツアーだから、面倒な手続きは旅行会社がやってくれるので、行く事ができた」。と話す、しかし、それだけではなく、行きたい気持ちが強かったおかげだと思う。海外ツーリングというと、面倒そうで、お金もかかるし敬遠されがち。でも、行きたい気持ちが強ければ、そんなマイナス要素は忘れてしまうはず。だれしも昔は持っていた行動力だと思うが、年を経る毎に、しがらみに負けて、そんな行動力もなくなってくるのではないかな、と自分も反省する話しだった。

  初めての海外に旅立ったヤキソバン。先ず、砂漠の国で、室内の涼しさに驚いた。「外は暑いのに、室内はクーラーが効いていると思っていたら、そんなことはない、ただ乾燥しているので、日陰が涼しく感じただけ。話には聞いていたが、それを行ってみて、初めて実感できた。エジプトの天気予報では気温は最高42℃までしか発表しないらしくて、というのは、それ以上の気温を発表すると、国民のやる気がなくなるから」だって。夜、町を歩くと、11時くらいまで、八百屋さんや肉屋さんが店を開けている。日本だったらコンビニくらいしか開いていないのに、エジプトは夜型の文化だと感じたと話す。

  ヤキソバンは観察眼がスルドイと感じたのは私だけではないと思う。特に料理を良く観察していて。「ツーリング中に食べたエジプト料理の「マフシー」ピーマンの肉詰で、ハンバーグよりスパイシーでソーセージに近いなと感じた。野菜はとっても美味しくて、ピーマンなんかは生で食べても美味しい、ツアーメンバーで結構取り合いになった。エジプトビールは炭酸が少なめでアルコール度が低く感じたけど、小麦の味がしっかりしていて、なかなか気に入った」と話す。ところで、会場では、ヤキソバンが前夜、徹夜して作ったエジプトの豆料理が披露された。食べたけど、美味しかったよ。ヤキソバン。

  ツアーで使用したバイクは、壊れればすぐ修理してくれるが、日常の整備をしていれば防げたトラブルが多かったらしい。ツーリング中に仲間の乗るバイクのエンジンからドレンボルトが抜けてしまうトラブルが発生。その時現地スタッフのメカニックは、近くの町まで行き、スパークプラグを手に入れてきて、それをドレンボルトが抜けた穴に差し込んで直してしまった。その修理方法もどうかと思うが、「手に入る物で修理してしまう技術」には感動したと話すヤキソバン。でも、日常点検をしっかりすればいいのにと言いたくなったらしい。

  「ツアー中にあるオアシスに寄る事になっていたが、到着してみると、大きな町でびっくりした。」という。オアシスといえば、小さな池にヤシの木が1本立っているだけというイメージだったらしい。でもその気持ち理解できるよ。
  「ツアーの良さはというと、舗装路から外れて砂漠を走れたことだ。」と話す。それは、ガイドがしっかりしているから。ツアーのデメリットはというと、メンバーのレベルに合わせてペースが決まるので、自分のペースで走れない事だったらしい。

  スクリーンにはカルナック神殿に行った写真が写されていた。そこで見た石で作られたオベリスクの高さに驚いて。それを表現するのに、そのオベリスクとガンダムを並べて見せたイラストを投影。思わず会場は大笑い。友人が作った傑作だ。ガンダムの大きさも良く知らないのだけど、それよりオベリスクが高いとは昔のエジプト人の技術にはびっくりする。

  いままでになく笑わせてくれたお話会で、ヤキソバンの人柄が良く表れていて、とっても楽しい時間を過ごせた。海外ツーリングの良さは、初めての物事に触れることができ、好奇心を満足させてくれるもので、それは、多くの国を旅して、長期間行けば、より多く得られるというものではなく、本人の好奇心次第で、たった数日旅しても十分に得られるものだということを実感させてくれたお話会だった。

  「ところで、あの女性とのその後はどうなったの?」という質問の答えは、「自分は試験に落ちたのでそれっきりです」と答えるヤキソバンであった。

   
「ヤキソバン」の被りもので登場
今度はエジプトの民族衣装に
お手製のエジプト料理(風?)
現地で買った服を展示