第22回WTN-Jお話会

『 真面目なサラリーマンの海外ツーリング 』

日時: 2008 年 11月29 日(土)
場所: 目黒区区民センター
話し手: 照本さん
報告者: 古山隆行
写真:藤原かんいち
 

 会場に入るとスクリーンにタイトルが投影されていて、そこには「真面目な」とあるところに、手書きで大きく「重要!!」と強調されてました。今回の話し手は 文字とおり背広にネクタイ姿で登場した照ちゃんこと照本さん。いままで、こんな真面目な姿で登場した話し手は記憶にありません。

  話始めるとすぐ「今日は、私の素性を明らかにします。自動車、オートバイ会社関係の方は会場にいますか?いない方が安心かな」
  その真意は、照ちゃんの仕事 は自動車、オートバイに使っている電装品の開発。日本の自動車、オートバイが優秀なのは、メーカの努力があるのは確かですが、それだけではなく、部品メー カーが優秀なのが大きな力になっているというのです。でも、その事をなかなかメーカーが表に出したがらないそうです。実は、今回のお話会、会社の出張扱いにもできたと照ちゃんは話してました。会社の宣伝をする、という条件ですが。そんなところにも、部品メーカーの大きな言葉に出したい気持ちを感じました。 照ちゃんが開発に携わった電装品を使った車が紹介され、それがどれも高級車ばかり。真面目な仕事振りが想像できましたよ。きっと自分の仕事ぶりに自信も あったのだと思います。

 そんな、日本の自動車産業を支えて仕事一筋だった照ちゃんが2003年秋、突然会社を辞めることになってしまいました。上司と衝突してしまった、と淡々と 話す照ちゃん。それって、一大事じゃないの?。とりあえず、翌年の春には別の会社に再就職が決まっていたそうです。突然手に入った半年間の時間。もしかしたら、これは、海外ツーリングに行く絶好の機会だと気がついたそうです。その時まで、海外ツーリングを楽しんでいる人達がいるというのは知っていました が、真面目なサラリーマンで時間もとれない自分には定年後の楽しみだろうと思っていたと話してました。

  海外ツーリングの経験がないので、行くとしたら海外バイクツアーがいいと思い立ち、早速旅行会社の道祖神に問い合わせたところ、ちょうど年末年始に南アメ リカへのツアーがあるとの事。申し込みも済ませ、準備も着々と進めた照ちゃん。地球の歩き方、旅の指さし会話帳、地図を買いそろえ、旅のイメージを膨らませていきました。ところが、出発1ヶ月前になって道祖神から電話がありました。恐縮した話し口で出てきた言葉は、ツアーの行き先が南アメリカから南アフリ カに変更したいというものでした。寝耳に水の照ちゃん。南アメリカで使う予定だった現地のバイク屋さんが夜逃げしてしまったそうです。こればかりは、道祖神でもどうすることもできません。”メ”が”フ”へと一字変わっただけと納得したみたいな照ちゃん。でも地球の歩き方、地図は買い直しました。

  初めての海外ツーリングで人生観が変わったそうです。広い広い、日本では出会えない砂漠の風景を自分の運転するバイクで走る快感。バイクにこんな世界があったなんて。活字や写真では読んだり見たりしたことはあったけど、実体験は全然違う。価値の幅が広がったそうです。
  毎日、昼間はアフリカの大地をバイクで思いっきり走り、夜はキャンプ、食事と冷えたビール。「とっても楽しかった」実感がこもってました。砂丘を見たときは「B級映画の火星みたい」。なるほどそう思います。照ちゃんが使った地図や日記にはいろんな書き込みがびっしり。見た事、聞いた事、体験した事が細かく記入してあり、それだけ、海外ツーリングで得た事が多いと感じれました。

 南アフリカですっかり海外ツーリングに魅了され、続いてオーストラリアツーリングを実行。ツアーにするか個人旅行がいいか、道祖神に相談したところ、帰ってきた答えは「照ちゃんの、バイクテクニック、ルックス、人格なら個人旅行がおすすめ」だったそうです。2004年2月にはオーストラリアに旅立ちまし た。45日間、ブリスベンを起終点にしたツーリングです。

  ツーリング中に思ったのは、自由。止まるのも自由、走るのも自由。そんな自由があるけど、寂しさ、心細さもあるのが個人旅行。でもそれも旅の楽しみですね。 オーストラリアで、道端で止まって休んでいた時の事、めったに車とは出会わないアウトバック。たまたまやって来た対向車に、北海道ツーリングでよくするよ うに手を挙げて挨拶したら、(照ちゃんの故郷は北海道です)車が止まってしまいびっくりしたそうです。相手はトラブルかと心配してくれたのです。親切に 『問題はないか?水は持っているか?』と確認してくれたりしました。それからは、挨拶するときは、親指をあげて、きちんと自分は問題ないというサインを出すようにしました。そんな事もあったそうです。

  柔らかな物腰で旅の話をする照ちゃんに会場もやわらかなムードが広がっていました。半年間に二回の海外ツーリングを経験し、さあ仕事だと思った矢先に、再就職するはずだった会社がライバル会社に買収されてしまい、再就職までご破算になってしまった照ちゃん、その時に映しだされた映像は、自宅の車庫で風で倒されてしまった自分のバイクの写真が。そんな悲しい映像も照ちゃんのやわらかなムードのなかでは会場中笑い声がしました。ツアーか個人旅行を選ぶのかは旅の手段であって、楽しむのは旅する本人です。照ちゃんの柔らかなムードならどこに行っても現地に溶け込んで旅を楽しめるというのを感じれたと思います。