第27回WTN-Jお話会

「糖尿オジサンのスクータによるシベリア/ヨーロッパ大陸 単独横断」
日時:2010年3月28日(日)13:30〜17:00
会場:雑司ヶ谷地域文化創造館 第1会議室
話し手:野地 二三夫さん
レポート:古山隆行
写真:古山里美
参加者:36名
  今回の話し手である野地さんは、WTN−Jの第1回お話会からの参加者です。あらためてその時の受付用紙を見返してみたら、8人目の欄にサインがあっ て、海外ツーリングの経験は無しの欄に○がついてました。2003年9月6日の事です。私もその時、野地さんとのやりとりを憶えていて、いつか海外ツーリ ングに行きたいという目的があって参加されたと話されていました。それから7 年近く経ってしまいました。このレポートの書き手はいつもお話会開催直前に会場で適任を探してお願いしているのですが、今回は最初から私が書くつもりでいました。それは、目標をずっとあたため続けようやく達成できた野地さんにちょっとだけ私のいつもの旅の計画方法に似た事を感じたこと、第1回のお話会の後で聞いた目標、そして、なんといっても、お話会にあたって話し手の準備の苦労の成果を記録として残すお手伝いができればという気持ちからです。

 「これは私の場合の旅です」と断ってから始まりました。旅のキーワードは「糖尿」「スクータ」「シベリア横断」。それから、野地さんの経歴紹介。生まれは1946年8月6日。福島県原ノ町生まれ。進駐軍が来たこと、ハローと声をかけたこと、外人は赤鬼に見えたこと。平成の世では想像ができません。その後、仕事上でアメリカ人とつきあって、子供の頃の見方が変わっていったのではないかと思います。
 1967〜1968の一年間ヒッチハイクでシベリア経由、欧州、中近東、アジアと旅しました。日本人の海外旅行が自由化されたのは1964年4月なので、たったその3年後の事です。そして、2006年定年退職。日本各地をツーリングし、2009年シベリア横断に出発しました。
 42年前と今回の旅で、大きく異なったのは、旅情報の差。それは、私には想像を遥かに超えてしまいます。情報が無いだけの問題では無いと思いますが、そんな時に海外に出る事を決めた思い。高い高いハードルを超えることができたのは、ものすごく どでかい好奇心 だったと思うのです。60代で海外ツーリングに出発するライダーには、40代、30代、そして20代にも負けない燃えるような好奇心があるような気がしてなりません。そんな情熱の火を消さずに持ち続けたからこそ、旅に出発できたのだと思います。そして、野地さんには、もう一つとっても大きなことがあったと思います。あまり詳しくは語りませんでしたが。それは、旅に出発する前年に奥さんを亡くした事です。今回の旅の目的は、42年前に五感で感じた旅を今度は奥さんと共に感じたいという希望でした。奥さんが亡くなった直後に野地さんと私はちょっと話す機会があったのですが、話しつつ、涙をこらえる野地さんと目を合わせることが私にはできませんでした。野地さんは旅に出発できるのかな、と私はその時思いました。今回の旅の間中、ポシェットに奥さんの写真をずっと忍ばせていたそうです。
 
 旅にあたって、野地さんは5つの目標をたてました。それは、1.シベリア横断。スクータ。単独。2,ヨーロッパ最北端ノルドカップ。3.大陸最西端ロカ岬。 4.昔からの知人、友人を訪問。5.体力の限界を試す。すべて達成しました。本人は段取りの野地と言ってますが、ノルドカップに到着したのは、なんと、8月6日、63歳の誕生日でした。思わず涙がこぼれたと話してました。ロカ岬到着は9月23日、秋分の日。すばらしい段取りですね。
 
 この旅は、人生のノウハウを活かした総決算の旅と話す野地さん。10年前に勤めていた会社で開催されたライフプランセミナーから帰った日が準備スタートだったそうです。具体的にプランをつめ始めたのは3年前。語学としてNHKロシア語講座を始めたのでしたが、これだけは2ヶ月坊主。でもキリル文字は憶えたので、これは道路標識を読むときにはとっても役立ったそうです。NHKの外国語講座で勉強したという経験談はよく聞きます。かくゆう私もその口です。安く勉強する方法としては一番だと思いますよ。
 
 私が野地さんのノウハウを特に感じたのは、コミュニケーションの方法です。 シベリアでは悪徳ポリスに会う確率は2割と経験者から聞いていたのですが、一度も野地さん自身は会ってはいないそうです。でもそれは偶然では無く、野地さんが人生で学んだノウハウを活かした結果だと思います。心掛けた事は、自分から相手に飛び込み、挨拶をする事です。親しみを込めて挨拶してきた人をだますことはできないと考えたからの行動でしょう。また、人とのやりとりでは、自分は馬鹿になる。相手より自分を下に置くことも心掛けたそうです。横柄な人に親切にしてあげようなんて気はおきないですよね。頭でわかっていても、実行するのはなかなか難しですね。そして、相手に尋ねる方法の秘訣も話してくれました。質問したい時には、いきなり質問するのではなく、自分が何をしたいのかを説明し、それから質問する。相手に考える時を持ってもらうのが秘訣だそうです。正に人生のノウハウだと思います。旅に限らず、日常でも活かすことができる事ですね。60代の旅行者ならではだと感じた一面です。
 
 会場には50代以上の方が目立ったと感じました。そして、とっても真剣に野地さんの話に聞き入る姿勢に、好奇心をたっぷり持った旅人の姿を重ね、関心の高さを感じました。日常生活では、ともすると無気力になってしまう時もあると思いますが、そんな時に、自分も忘れかけそうな、旅への好奇心を思い出す刺激を受けることができました。
 
 話の最後に、1枚の写真がスクリーンに写しだされました。そこには、ようやく到着したユーラシア大陸最西端にあるロカ岬灯台とその麓の草むらに置いた奥さんの写真を一緒に写したものです。ここで、野地さんは目的地に着いた事を奥さんに話しかけたそうです。

ノルドカップに到着
2009年8月6日、63歳の誕生日

1967〜1968年の旅を含む
アルバム等