第29回WTN-Jお話会

「旅行初心者、アブナイ二人のアフリカ横断記」
日時:2010年7月11日(日)14:00〜16:00
会場:渋谷区本町区民会館
        東京都渋谷区本町4−9−7 
話し手:間部 一功(まなべ かずのり)さん
レポート:もんがぁ〜さとみ
写真:古山 隆行、もんがぁ〜さとみ
   今回は、大学院生2人による8ヶ月間のアフリカ・ツーリングのお話。学生のノリって、いいなぁ〜! 間部さんのお話は、そんな若さはじける楽しいエピソードがてんこ盛りだった。
 
 まず、旅の話の前に、学生寮時代のエピソードをいくつか披露。例えば旅費を稼ぐためにパン屋でバイトをした話。店で売れ残ったパンを連日学生寮に持ち帰るのだが、寮内放送で寮生にパンの到着を告げ、寮生がワーッとそれにたかり、でも、だいだい同じパンが売れ残るので、次第にみんな飽きてきて…、など。楽しい思い出話を聞いていると、私ももう一度学生時代に戻りたくなってしまうほどだ。
 
 今回は家庭の事情でお話会に出席できず、でも、前日夜遅くまでこのお話会のために時間をさいて打合せに付き合ってくれたという旅の相棒の西澤さんとも、この学生寮で出会ったという。2人とも出身は神奈川県、しかもその実家から50ccのオフロードバイクで仙台の学生寮に行ったという、なんとも不思議な共通点があり、すぐに意気投合したそうだ。
 
 さて、14年前の旅というと、まだインターネットも普及せず、旅情報は本や自分の足で稼ぐしかない。大使館へも何度も足を運び、ブルキナファソ大使館からは「国境でビザが取れるように手配した」という手紙をもらう。カメルーン大使館からは「ボスが会いたい」と電話がきて翌日に訪れたところ、こちらはフランス語はしゃべれないし、英語もヒアリングができないということで、相手に紙に書いてもらって意思疎通を図った。そのやりとりでは「6ヶ月間のビザで、6万円」と言われ、「学生でビンボーだから1週間の滞在に6万円は出せない。ビザはいらない(あきらめる)」と言ったら、1万5千円にディスカウントしてくれたそうだ。旅が始まる前から、すでに旅の楽しさを味わっている! 
 バイクを運ぶ船会社も電話帳から探し、旅のことを担当者に熱く語ったら、「学生でお金ないんでしょ」と、1台につき7万円という格安でやってもらうことに。おぉ、さすが学生の特権!
 
 旅先でけがをした時の対処のため、なんと、傷口の縫い方までマスターしている。どうしたかというと、診療が終わった頃を見計らって病院を訪れ、先生に旅のことを熱く語って、それで先生も、おぉ、そうか、という感じで教えてくれたそうだ。しかも、アフリカでは衛生状態も心配だということで、注射針やメスまでもらったそうだ。
 
 海外旅行はもちろん、飛行機に乗るのも初めて、しかも英語もまったくダメという2人だが、旅のトラブルは、持ち前の物怖じしない性格と機転でうまく切り抜ける。そのエピソードをいくつか紹介しよう。南アのダーバンで水に当たった時は、レストランに飛び込んで「もう出そうなんです! トイレ、トイレ!」と日本語でまくしたてたら、相手が察してくれ、トイレに案内してくれた。スワジランドはホテルがなく、野宿も危険なため、金持ちそうな家を狙って泊めさせてくれるよう頼み込み、しかもその次の宿(民家)までついでにお願いしてしまう。ニジェールのニアメでは、怖い人にからまれないためには、自分たちも怖い人に見られるようにしよう、という発想で、髪型をとにかくヘン(モヒカンとか)にした。などなど。
 
 一番のトラブル(らしきもの)は、ケニアでマサイ族の人に大金を貸して返ってこなかったことだろう。家の脇にテントを張らせてくれた親切なマサイの男性に、母が亡くなって葬式などお金がかかる、と言われて400ドル貸したが、約束の3日後になっても返しに来ない(この時は旅人達が集まるキャンプ場に移っていた)。警察には貸した証拠がないから動けないと言われ、次のエチオピアのビザも切れそうになるため、一時はあきらめかけたそうだ。しかし、同じキャンプ場にいたフランス人ライダーに「こういう前例を作ってはよくない」と諭され、彼とともに金を返してくれないマサイと再び対峙することに。強行手段に出て、お財布をとりあげ、まず180ドルを手にする。そして、なんと1週間後には全額とはいかないが、お金を返してくれ、結局396ドルが戻ってきたそうだ。この出来事が、その時はお互い苦い思いをしたかもしれないが、時を経て、間部さん、西澤さんはもちろん、マサイの人にとってもいい人生経験だったと思えるようになっていることを願う。
 
 2人が、ノリと若さだけで突っ走った旅のように書いてしまったが、そんなことはない。旅の準備での大使館巡りでもわかるとおり、人とのコミュニケーションを大切にし、そして、事前に文献を調べる努力もものすごくしている(ようだ)。旅の期間8ヶ月のうち、雨に降られたのは3回だけだったという。それも、事前に各国の雨期をよく調べ、それを避けるようにルーティングした結果なのだ。学生の本業『勉強』も一応(?)旅に取り入れ、南アのプレトリア大学(日本の東大に相当するそうだ)を訪れて、自分の研究分野である地質学の資料室を見学し、アフリカの岩石を自分の目で見てきた。
 そして、2人で無事にダカールの海にゴール。1年休学の間部さんだが、相棒の西澤さんは、2年間の休学とのことで、この後もモーリタニア、モロッコ、スペイン、フランスとまだ旅を続けたそうだ。機会があれば、西澤さんのお話も、ぜひ聞いてみたいものだ。
 

 間部さんの旅のデータについて。
 250万円の旅の資金のうち、155万円が出発前の出費。30万9千円がバイク「ジェベル200」、そして28リットルのタンクなど改造費用で約17万円。そして航空券や海外保険など。
 荷物は、自炊道具はなし。1万円で買った水の濾過器は余計だった。雨をとことん避けたため、着替えはTシャツ2枚、パンツ2枚、靴下2足の必要最小限で事足りた。英語とフランス語の会話集はよく使ったとのこと。
 最後の質問コーナーで、私が「なぜアフリカを選んだのか」という質問に対し、「日本では情報が入ってこないところを旅したかった。でも、南米かアフリカかで、南米はマフィアが多いと聞いてやめた。アフリカは、日本にいてもどんなところかよくわからなかった。情報がないから、逆に興味を持ったんだ」という返答だった。情報がないことが旅の原動力。うん、そうだよなぁ。私も多いに共感!! 今の時代では、インターネットの普及で、事前の情報収集はかなり楽になった。でも、あえてそれを調べずに(もちろん”無謀”とならないよう、基本事項は押さえるが)、”未知の国”として旅する方が、断然おもしろい。間部さんのお話が、その情報のない国々を旅する楽しさを、存分に伝えてくれた

会場の様子

間部さんのいた学生寮での一コマ
 
70歳で車で世界一周を果たした反田さんも聴講。
   会場にその車とともに駆けつけた